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ミスリム

 

ミスリム by 荒井由実

 

 

しばらく休業していた楽音舎sanで探したのだけど残念ながら在庫無く、そこではXTCのCDを購入す。その後ファイブワンsanにてこのレコード盤を見つけた。実は『ひこうき雲』もあったのだが、前の持ち主さんの直筆メモがジャケット裏に刻まれていたので止めた。

知っているようで大して知らない松任谷由実なのだが殿方の愛聴者に水を向けると、結婚前すなわち荒井由実名義のひこうき雲とミスリムは良いと誉める。実は自分は『昨晩お会いしましょう』の不思議感漂うジャケットに引き寄せられた口で、のちのち『ボイジャー』を買った。近年この2作はヒプノシスのアートワークだったと知り、結局自分はヒプノシスやプログレに接近する彼女に興味を持ったのかも知れず、この人の音楽の事はあまり解っていない。そこでこのミスリム。1曲目「生まれた街で」パステルを走らせるかの如き荒井の詩と歌唱。それを囲むサポートのティンパンアレイは大胆にも間奏~展開に即興性を持ち込み始め、ドライでありながらもどこかノスタルジーのにじむ幻想世界を織り上げてゆく。確かにプログレ的であるしその上カンタベリー系をも想起させる。

アル・スチュアートかと見紛うやんわりパーカッシヴポップス「12月の雨」でA面が終わり、盤を返すと意外にギター×ファンク×アッコさんな「あなただけのもの」が始まる。荒井由実の無表情なヴォーカルのせいか暑苦しさのない一幕。キャラヴァンのマイク・ウェッジウッドの曲にもアッコさん風な歌があるのだが、ファンクに接近しそうで近づかない感じ。「私のフランソワーズ」「旅立つ秋」のラスト2曲も古典だけど読み返したくなる詩集のよう。

という訳で『ひこうき雲』の探索が楽しみになってきた今日この頃です。