筒井康隆作品を読む 序

かつて中央公論社から出版された月刊誌マリ・クレールに連載されていた小説「パプリカ」日記風エッセー「幾たびもDiary」が面白かったということ、数年前に大林宜彦追悼で映画「時をかける少女」を観たことなどで、作者である筒井康隆の本をじっくりと読んでみようという気になった。実は「幾たびもDiary 」連載当時、作中で氏が執筆中の他作品を紹介していてそこそこの興味はあった。ところが何しろ他に読みたいものが沢山あって全く筒井作品には追いつけなかった。今頃になって図書館のウェブサイトを検索すると、有難いことに全集はあるし、文庫化されていて手に取り易いものもある。

ものを書いていてひどい目にあったので断筆した。という話を何かの雑誌で読んだ。前後して阪神大震災を体験する。なお断筆するとさらに文壇からえらい目にあったのだという事も後になって知った。

その断筆時期だったかどうか記憶曖昧だけど、テレビドラマ「ガラスの仮面」に出演していた。なんと速水真澄の養父英介役で。ご本人を見たのはこれが初だったと思う。近年「通販生活」のテレビCM でまたお見かけしたけれども。色々と過去の記憶をたどるうち「幾たび~」の中で舞台劇を上演する旨の記述があったことなんかを思い出す。これはミステリ仕立てで新神戸オリエンタル劇場だったはず。筒井氏本人が出演していたかどうかは不明だしだいぶ記憶が薄れているので、ウェブなどで調べるとどうやら「スタア」という戯曲のことらしい。

一旦ここで「幾たび~」で述べられた筒井作品と思しきものをピックアップしてみる。

 

①ダンヌンツィオに夢中 ②ロートレック荘事件 ③残像に口紅を ④文学部唯野教授 ⑤スタア(多分)

図書館より順に借りて読む予定なのだが、③は何と希望者多数でずいぶん先になりそう。

 

上記の小説を読み終えたら(⑤スタアが70年代の作品でもあるわけだし)筒井氏の初期の作品にも目を向けてみようと思う。新潮社から筒井康隆全集が出ており、山藤章二によるカヴァーデザインがモダン。

目次を見たところかなりの量の短編が収められている。タイトルも何だか奇妙で不思議感漂う。この感じはハヤカワ異色作家短編集のチャールズ・ボーモントとか、フレドリック・ブラウンにも似た洒落た違和感かも知れない。