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第九夜 シドにはチェルシーがよく似合う

端正な顔立ち、アグレッシヴなギターワークに内省的な詩作。ビートルズなくして始まった1970年代の英国においてシド・バレットは次のアイドルと期待された一人だと思う。しかし古いポスターを見ると、瞳が綺羅星のごとく輝いているときもあれば、どんよりとした虚ろな表情も少なくない。(人間だもの)【夜明けの口笛吹き】の日本盤帯には『サイケデリックの新鋭✨キラーン』などと書かれているので、ピンク・フロイドもサイケ・アートロックを目指すヴァンガードな扱いだったのだろう。とつい内容を語りそうになるが、シドのサイケデリック色を聴き取るたびに思い出すのはバターキャンディでおなじみの明治チェルシーの包み紙なのだ。(しかも旧タイプで箱型のほう)チェルシーと言えばテーマ曲も普遍的で良い。あのサイケな花畑に浮かんでは沈むシド。あなたがそこにいて歌ってくれたらと偲ぶ。