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第五夜 ピート・シンフィールド最後の一矢

   こちらはオリオン大星雲
   こちらはオリオン大星雲

 

漆黒の宇宙かなたに燦然と輝く射手座三裂星雲。

ピート・シンフィールドのアイデアと思われるけども、何故【アイランズ】で宇宙?

 

曲を聴きながらも自分は始めこのジャケットがよく解らなかった。まあ解らないのがプログレらしくて良いんじゃないのと。今にして思えば、当人たちはもうこのバンドは終わると気づいていたのかも知れない。

【クリムゾン・キングの宮殿】で衝撃的なメジャーデビューを遂げ、ポセイドンのめざめ→リザードと幻想スピリチュアル路線を走ってきたキング・クリムゾンだったが、アルバムも4枚目になると、主宰ロバート・フリップとその他の演奏者そしてコンセプトデザイナーのシンフィールドとの両輪に軋み、亀裂が生じ始めた頃合いだろうか。私の邪推だがフリップがもう既に幻想世界に飽きていたとも思える。そんな訳かどうかは不明にしてもアイランド期終了後メンバーの脱退をきっかけにバンドは瓦解してゆく。「崩壊」の意思を先んじて汲み取ったシンフィールドの最後のデザイン。

ところで分割されていると思われがちな三裂星雲、じつは性質の違う星雲が寄り集まって形成されたものが私たちには割れて見えるのだとか。

 KCを追われたシンフィールドはエマーソン、レイク&パーマーの【恐怖の頭脳改革】で作詞を担当。特に『悪の教典♯9』ではヘッセを髣髴させる見事な錯乱心象風景を描くのだが、それでもELPの延命に役立てる程ではなかった。

 

<余禄>

なんとELP頭脳改革の次【ラヴ・ビーチ】でも詩作で参加していたシンフィールド。でももうこれはプログレッシヴロックとは言わないんだそうで。自分は未聴。そろそろプログレも停滞気味な時代に移り変わってゆく。

今BGMで聴いているのはフォリナーのベスト盤から【ダブル・ヴィジョン】最近知ったのだがなかなかの佳曲で気に入っている。次いでリリースした【ガール・ライク・ユー】は日本でもチャートイン。なんとこの私でさえ子ども時分に洋楽ラジオ番組に電話リクエストしたといふ思い出の曲。(因みに邦楽リクエストではクリエイションのロンリー・ハート)そんな背伸びな日々を送っていた1981年、まさか宮殿を作って出て行ったイアン・マクドナルドがそのフォリナーを結成していた事など知る由もなくKCの事も知らない。マクドナルドはしかしダブル・ヴィジョン、ヘッド・ゲームスを経てフォリナーを脱退しメインストリームからは姿を消す。どうも元KCメンバーは宮殿に於いて見事な演奏をしていただけに、後年は勿体ないというイメージばかりが付きまとう。