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第三夜 裏窓と知り過ぎていた男と 

ブランドXはパーシー・ジョーンズという技巧派ベーシストを中心に手練れのミュージシャン達によって結成された英国のグループである。

メンバーが技巧的である故か、ロックと言うべきか、むしろジャズそしてフュージョンへの傾倒が強く、アルバムの中でもインストゥルメンタルが歌ものを量、質ともに上回っている。少ない歌ものでヴォーカルを担うのはドラマーでもあるフィル・コリンズであることも一応申し添えておく。

 

アルバムのアートワークを手がけているのはいずれもヒプノシス。

 

①アンオーソドックス・ビヘイヴィアー

②モロッカン・ロール  

 

一瞬はっとさせられるサスペンスフルな瞬間が見事に切り抜かれている。

②はヒプノシス特有の顔は見せず後ろ姿で物語る、松任谷由実の『昨晩お会いしましょう』のパターンで、より緊張感の高い構図。白い服の男は射程圏内に捉えられてしまったようだ。

①はヒプノシスにしては珍しく顔がある。と思ったらブラインドから覗く「眼」だけがこちらに鋭く向かってくる、これもまた緊迫感高まるアートワークだと思う。

最近は①『裏窓』②『知り過ぎていた男』と連想しながら、往年のヒッチコック映画とブランドXのスリリングな演奏、両方愉しめる事に気づいた。