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ハモンドの碩学 ジミー・スミス

ジョン・ロードがオルガン奏者になろうとした動機は彼の独創性と恰好良さなのだとか。ジャズオルガンの草分け的存在と謳われるジミー・スミスについて。

 

ジミー・スミスは元来ピアニストとしてアメリカのジャズシーンに登場している。オルガン奏者となった経緯は分からないが、1950年代からハモンドB-3のプレイヤーとして精力的に活動し、多くの録音を残した

A New Sound A New Star(’56年)のオープニング 今宵の君は(映画『有頂天時代』でアステアが優雅に歌うあの原曲を知っている人は驚くほど)の鋭く戦闘的なイントロにエマーソンを思い出さずにいられないし、1930年代にヒットしたジャズナンバーディープ・パープルが収録されたThe Champ(’56年)も流石ハモンドの碩学にふさわしい品格と圧倒的な力を兼ね備えている。いずれもブルーノート・レーベル時代の逸品。

後年、マイケル・ジャクソンのBADの録音に参加し(おそらく)ハモンドC-3による大変短い、それでいて非常に力強い間奏を受け持っている。このBADは気づかれにくいのだが、個々のパーツは実に後期プログレ風。イントロはトレヴァー・ホーン風だし、おなじみのAメロ通奏低音ベースラインはエマーソンの悪の教典♯9第1印象パート2で同じものが聴ける。更に畳みかける重厚なハモンド、冷徹さの残るシンセのカデンツァに彩られた間奏。或いはシンセはクインシーだったろうか・・・時はフェアライトやシンクラヴィアなるシンセキーボードが台頭してきた80年代。

長年「マイケルが何故こんな時にプログレ?」と疑問に思っていたのだけど、悪の教典で試みたエマーソンのブラックミュージックへのアプローチを感知したマイケルが「じゃあ我々がブラックミュージックの粋を集めて悪の教典をやったらどうなる?」とエマーソンに問い返したかったのかも。あくまでも邪推ですけども。