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英国三大キーボーディスト その1

 

ジョン・ロード

1941年~2012年

 

キース・エマーソン

1944年~2016年

 

リック・ウェイクマン

1949年~

 

Gingerbreadが勝手に決めただけあって、プログレ、ハードロックへの偏りは否めないです。一応年功序列です。

フォーカスのタイス・ヴァン・レアも素晴らしい演奏家だと思うがオランダ人だから仕方ない。ではコロシアム出身のデイヴ・グリーンスレイドやコロシアム2出身のドン・エイリーはどうかというと「大」演奏家とは申し上げにくい。でも音楽院の先生のように安心、安全、懇切丁寧である。勿論、技術面に於いても既にお三方を超えているのかも知れないが。

 

ジョン・ロードの熱情的なハモンドオルガン演奏を聴くと、バッハのトッカータを思い出してしまう。(要参照 ディープ・パープル Highway Star或いはBurnの間奏)もっとも卿はクラシックではバッハ、ジャズからはジミー・スミスの影響を隠してもいない。ちなみにトッカータと言うのはイタリア語のトッカーレ=触るに由来する「演奏前のオルガンやチェンバロの調律や感触をみる為の試し弾き」から出てきた楽曲なので、バッハはもとよりスミスのジャズオルガンが超即興的であり、またパワフルであるということは、当時若者だったロードにとっても衝撃と同時に納得であり、鍵盤楽器奏者として自ずと薫陶を受けていたのかも知れない。

 

何も卿に限った事ではなく、エマーソンなどは学生時分に地方ピアノコンクールのバッハの部で2位になった経緯もあるらしく、フーガ(エマーソン、レイク&パーマーの4thアルバムトリロジーに収録)での演奏を耳にすると、オリジナル作品であるにも関わらずバッハ(のクラヴィーア)への強い傾倒を感じる。もう少し聞き込むとジャズまたはドビュッシーの軽快さも顔をのぞかせてバロック×ジャズの図面がどんどん広がってゆくのが面白い。

 

前述の二人より若い(と言ってももう70歳を過ぎた)が、戦後生まれのウェイクマンはクラシックの教育を受けている人で、モーツァルト的な享楽が混入する感じの印象的な演奏家だ。多芸多才な人でタクシー会社を経営したり、サッカーチームのオーナーだった事もあるのだとか。そうした副業は音楽で儲かった後からついてきたものでしょう。音楽院在学中より職業演奏家への道をかなり真剣に探っていたと思われる。キャット・スティーヴンスの雨に濡れた朝、デヴィッド・ボウイの火星の生活で担ったピアノパートは、これらを名曲に押し上げたほど華麗な技巧とポエジーに満ちており、なんとイエス以前の仕事なのである。イエスに加入後、短い期間ではあるものの濃厚な才能をいかんなく発揮するのだが、聴き手としてはこわれもの危機または究極をまず押さえておきたい。余力があればヘンリー8世と6人の妃も。